腎臓は様々な形で身体の健康のために機能している重要な臓器です。2つの健康な腎臓は1日あたり200リットルの血液をろ過し、血圧をコントロールして赤血球の生成の手助けをしています。
腎臓の機能は健康の状態に大きく左右され、例えば不健康な生活習慣や肥満、非活動的な生活スタイルなどと関連のある糖尿病や高血圧を抱える人は腎臓の機能にも影響があります。また、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコクシブなどの非ステロイド性抗炎症薬の服用も腎臓にとって有害です。加齢による腎臓への影響もあり、腎機能をはかる数値である糸球体濾過率(GFR)は50歳頃を過ぎると毎年1パーセント低下していきます。
近年糖尿病や肥満が急激に増えてきている中、かつてないほど多くの人が慢性腎疾患と診断されています。慢性腎疾患(CKD)とは腎不全の原因ともなる完治することのない進行性の病気です。慢性腎疾患は特に自覚症状がないことがほとんどで、かなり進行して手遅れになってから気づくことが多いので注意が必要です。
研究を通じて腎疾患について様々なことがわかってきています。近年の研究では多くの人が好む飲み物や食べ物に含まれる化学物質が腎臓に深刻な影響を与えることが示唆されています。グリホサート除草剤を使用した大豆やソフトドリンクに使用されている人口甘味料などが一例として挙げられます。
ダイエット炭酸飲料の危険
およそ50年前にサッカリンなどの人口甘味料で甘みを出したシュガーフリーの炭酸飲料が初めて販売されました。1980年代にはサッカリンに代わってアスパルテームが低カロリーの炭酸飲料に使用されるようになりました。
20年以上かけて三千人以上の健康な看護師の食習慣と健康を調べた研究によって、人口甘味料を使用した飲み物を飲むことと腎機能の低下に何らかの関連性があることがわかっています。
腎機能の低下
この研究の結果、一日あたり2回以上人口甘味料入りの炭酸飲料を飲む人は、全く飲まないグループと比べると腎機能が30%低下することが明らかになりました。
現在では、アメリカの腎臓財団を含む様々な団体がダイエット炭酸飲料を飲まずに水を飲むように指導しています。砂糖を含んでおらず、炭酸飲料よりも安価で、腎臓が毒素を排出するのを助ける役割も果たすからです。
グリホサート除草剤
大豆は世界中で最も消費されている食物のひとつです。手軽なたんぱく源であり、栄養面でもバランスが取れています。飽和脂肪が少なくコレステロールを含んでおらず、食物繊維、カルシウム、鉄分が豊富な食材です。
大豆自体が腎臓に有害なわけではありません。遺伝子組み換え(GMO)大豆に使われる除草剤に含まれるグリホサートと呼ばれる化学物質が有害なのです。遺伝子組み換え大豆はグリホサートに対する耐性を持つように遺伝子操作されているので、グリホサートを使用して他の雑草を除草しても大豆には影響がありません。そして吹き付けられたグリホサートの一部が収穫された大豆に残留しているのです。
腎臓への影響
遺伝子組み換え大豆の誕生から20年が経過し、急速に一般化してきている中、世界中で生産される大豆の80%以上が遺伝子組み換え大豆になっています。遺伝子組み換えの作物は増え続けており、グリホサートは世界で最もよく使用される除草剤となりました。
2015年には、世界保健機関(WHO)がグリホサートとがんの関連性を示唆しています。大豆畑で働く農業従事者たちが、糖尿病や高血圧と言った典型的なリスク要因がないにも関わらず腎臓に深刻な問題を抱えていることからグリホサートの腎臓への健康被害が注目されるようになりました。近年では実験室にてグリホサートを与えられた動物の腎機能に大きな影響が出ることが明らかになり、またこの化学物質が腸内のマイクロバイオーム(微生物叢)を破壊して有益なバクテリアと有害なバクテリアのバランスを崩すことも分かってきています。
オーガニックという選択肢
大豆や大豆製品を選ぶ際に、有機農法で栽培されたものを選ぶことでグリホサートによる影響を減らすことができます。オーガニックのものであっても自然の除草剤を使っていることはありますが、化学物質による除草剤を使っていることはありません。
自分の健康や腎機能について心配事がある場合には受診して相談をし、必要に応じて腎機能の検査を受けるとよいでしょう。
(Dr. Sira Sooparb, バムルンラードインターナショナル 腎臓専門医)
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