救命救急・集中治療室での肺・呼吸器科専門医として入院患者さんの治療をし、一方で新型コロナ感染症の後遺症や、肺・呼吸器疾患、また睡眠外来での外来を持つ
Prof. Dr. Chok Limsuwatの日常ははっと息をのむような緊張感が漂っていると思われがちである。しかしDr. Chokは、「救命救急医というのは、重篤な患者さんを診るのが仕事であり、重症患者さんを診るということは、情熱が必要で、常に細部にまで気を配らなければなりません。集中治療室での治療を必要とする重症患者を含めて、あらゆる種類の患者さんに柔軟に対応できるように常にスタンバイするというのは日常化してしまいました。」と語る。
「私のモットーは、患者さんがコロナ感染後に、以前と同じ生活に戻れるようにすることです。多くの患者さんに一歩一歩寄り添っていました。」
呼吸器科という専門分野は、実はとても各科と密接に関係しているので、常に綿密な連携が必要である。集中治療室にいるほとんどの患者は、呼吸不全など肺に重大な問題を抱え、人工呼吸器のサポートが必要な場合がほとんど。新型コロナウイルスの大流行で、これら専門分野への需要が急激に高まった。新型コロナウイルスの流行に直面した当時、Dr. Chokは医学部で医学生に教鞭をとり、救急医療に携わり、しかも呼吸不全で運ばれてくる患者さんの最前線に立たなければならなかった。挿管し、集中治療室でケアし、さらに呼吸器内科でその後のフォローアップもしなければならなかった。患者さんの生活の質を向上させるための献身的な努力は、患者さんだけでなく、医療従事者チームにとっても、インスピレーションとなった。実際、バムルンラード病院の患者さんからの意見箱には、多くの患者さんからの賞賛の声をいただき、「スター・オブ・バムルンラード」を受賞した。
タイとアメリカで7年間、内科、救命救急、呼吸器科、睡眠科の研修を受けたDr. Chokは、患者さんに寄り添うだけでなく、医学部の助教授として6年間教鞭をとり、医師を目指す人たちに彼のモットーを伝授している。こんなDr. Chokに、自身の専門分野やバムルンラード病院での治療(特に呼吸器科)について詳しく話を聞いた。
肺の専門医とは?
重症患者を診るだけでなく、肺の専門医であるDr. Chokは、上気道から下気道、つまり肺の疾患を全般的に専門としている。上気道や肺組織の疾患、肺炎、間質性肺疾患(肺の瘢痕化)、あるいは肺の血管異常などの珍しい病気まで、あらゆる患者さんに寄り添っている。世界各国から治療に訪れる患者さんの中には、さまざまな特徴的な地域からやってくる各地特有の環境にさらされている。そのため、症状も原因も治療法も多岐にわたり、まさに日々チャレンジである。
タイで多い肺の病気と、気をつけるべき症状とは?
タイに限らず、多くの国で最も多い肺の病気は、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性疾患。喘息は気道の病気で、子どもから大人、そして高齢者まで、どの年代の人でもかかる可能性がある。症状としては、咳や息切れなどがあり、多くの場合家族に症状がある場合の遺伝性が強い。COPDの場合、何ヶ月も咳やたんが続き、呼吸困難や息切れ、運動耐容能の低下、長距離を歩けなくなるなどの症状が見られる。喫煙や公害も、特にタイでは多くの肺の問題を引き起こしている。例えば、PM(粒子状物質)は大きな危険因子で、PM2.5は、粒子が肺の中にまで入り込み、高濃度になると気道に炎症が起こるリスクが高まるため、致命的な物質として有名。マスクはPM2.5をろ過する効果があるので、コロナ後でもぜひ着用を推奨する。
コロナの治療の最前線ではどのような治療を行っていたのか?
コロナという予想外のパンデミックにおいて、コロナに感染した患者さんの症状は肺の問題だけではありません。バムルンラード病院では、感染症、循環器(心臓)、そして呼吸器(肺)の専門医で構成される特別チームを結成する必要があった。バムルンラード病院の集中治療室では、最新機器・器具、各専門分野の優秀な医師たち、必要な検査や薬の提供など、患者さんをコロナ感染前の日常生活に戻るために必要なすべてのサポートを提供していた。コロナ感染後の多くの患者さんが苦しめられているコロナ後遺症は、今もなお患者さんの生活の質の向上という観点で大きな課題となっている。
コロナ後遺症とは何か?
WHOによると、コロナ後遺症とは、コロナ感染後90日以上症状が持続することである。最も多いのは、咳、胸の痛みや圧迫感、疲労感、睡眠障害(眠れないか、眠りすぎてしまう)。これは若い患者さんや、何度もワクチンを接種している人にも起こる可能性がある。コロナ感染後であっても、長引く発熱、脱毛、記憶障害、疲労感など、通常とは異なる症状がある場合は、医師に相談を受けることを推奨する。ほかに、症状の原因がないことを確認し、必要なすべての検査を行い、コロナの症状が続いている・コロナ後遺症と診断された場合は、特定の薬などを開始することが可能。
バムルンラード病院チームが成し遂げた成功例とは?
今でも忘れられない症例は、当時はまだコロナ感染症に関する知識や研究もあまり発表されていない頃に、他の病院からいらっしゃった一人の患者さん。その患者さんは60歳くらいで、過去に病歴もなく、とても健康な方でしたが、症例は重症。来院時、挿管されていて、両肺から空気が漏れ、軟部組織まで空気が到達しているため体がむくみ、ショック状態で人工呼吸器を装着している状態であった。コロナ感染症の初症例からもまだ日が浅く、知識も浅かったため、大きなチームを結成し彼のケアにあたった。チームは、専門知識を駆使し、医学雑誌を見直し、それぞれの症状に応じた基礎医学の知識を駆使して、彼を治療する方法を見つけなければならなかった。そんな患者さんが、4ヵ月後には再び歩けるようになり、今では18ホールのフルゴルフをするまでに回復された。目標は、単に治療を提供するだけでなく、その後の人生を謳歌できるよう、以前の生活に戻れるようサポートすること。
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- 呼吸器科
Tel: +66 (0) 2011 2222