bih.button.backtotop.text

バムルンラード健康ブログ 第17回 肝炎

2月 12, 2020
肝炎とは何でしょう?簡単に言うと、肝臓が炎症をおこしている状態を指します。ウイルス性肝炎と呼ばれる、ウイルスが原因である肝炎もあり、世界中でよく知られています。
 
それ以外にも、毒素や過度のアルコール摂取、薬剤やドラッグの濫用、脂肪肝、肝臓や体内に鉄や銅が溜まりすぎた場合、身体が過度に肝細胞に対する抗体を作りすぎる場合などにも肝炎になることがあります。これらが原因でなる肝炎はまとめて非ウイルス性肝炎と呼ばれます。
 
今回はこの2種類の肝炎についてや、治療法、予防法についてご説明します。

 

5つのウイルス性肝炎

A型肝炎:A型肝炎ウイルス(HAV)によって生じる肝炎で、A型肝炎ウイルスを持つ人の排泄物によって汚染された食べ物や水を通じて感染します。慢性肝炎になることはありません。急性肝炎になる場合が多く、長期にわたる影響が出ることはあまりありません。A型肝炎は最も感染者数が多い肝炎になります。
 
B型肝炎:B型肝炎ウイルス(HBV)によって生じる肝炎で、傷口から感染したり、血液、唾液、精液などの体液を通じて感染します。B型肝炎患者との性交渉、注射針の使いまわし、B型肝炎ウイルスで汚染された注射針や髭剃りの使用などによって感染することがあります。急性肝炎になる場合が多く、長期にわたる影響が出ることはあまりありませんが、出産時や1歳までに感染した場合には慢性肝炎になる場合もあり、B型肝炎ウイルスキャリアとなります。世界保健機関(WHO)の推定では、2017年4月現在、およそ2億5千7百万人のB型肝炎患者がいるとされています(B型肝炎表面抗原保有者)。
 
C型肝炎:C型肝炎ウイルス(HCV)によって生じる肝炎で、傷口から感染したり、血液、唾液、精液などの体液を通じて感染します。C型肝炎患者との性交渉、注射針の使いまわし、C型肝炎ウイルスで汚染された注射針や髭剃りの使用などによって感染することがあります。C型肝炎は最も蔓延している血液感染症のひとつです。成人がかかるケースがほとんどで、70パーセントの割合で慢性化します。世界保健機関(WHO)の推定では、2017年4月現在、およそ7千百万人のC型肝炎患者がいるとされています。
 
D型肝炎:D型肝炎ウイルス(HDV)によって生じる肝炎で、傷口から感染したり、その他の経路から感染した血液と接触することによって感染します。D型肝炎への感染はB型肝炎と同時感染でのみ起こり、非常に稀です。
 
E型肝炎:E型肝炎ウイルス(HEV)によって生じる肝炎で、飲料水によって媒介されます。通常E型肝炎は汚染された排泄物を通じて感染し、非衛生な場所に見られる病気です。急性肝炎のみを引き起こし、慢性肝炎になることはありません。
 
これらのすべての肝炎が急性肝炎や慢性肝炎を引き起こしますが、B型肝炎とC型肝炎は特に慢性化しやすい傾向にあります。一般的に、A型肝炎とE型肝炎は汚染された食べ物や飲み物を通じて感染し、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎は血液や体液を通じて感染します。

 

慢性化したB型肝炎とC型肝炎の合併症

慢性化したB型肝炎およびC型肝炎は、より深刻な健康問題につながるため注意が必要です。B型肝炎やC型肝炎が慢性化した場合、以下のようなリスクが生じます:
  • 肝硬変(肝臓の瘢痕化)
  • 肝がん(肝硬変患者において珍しいことではありません)
  • 肝不全-以下につながることがあります
    • 腎不全
    • 出血障害
    • 腹部や脚部への体液の蓄積
    • 肝臓の門脈への圧迫
    • 昏睡

 

非ウイルス性肝炎

過度のアルコール摂取や薬剤の乱用によっても肝臓が炎症を起こすことがあり、中毒性肝炎と呼ばれます(アルコールのみが原因の場合にはアルコール性肝炎とも呼ばれます)
 
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、あるいは重度のNAFLDである非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝細胞中に脂肪が過度に蓄積されて炎症が起こり生じます。糖尿病、高脂血症、肥満、高血圧(メタボリックシンドローム)などと関連があることが多く、慢性肝炎、肝硬変、肝がんにつながることもあります。
 
自己免疫性肝炎の場合には、体内の免疫システムが肝臓を身体にとって有害であると誤って認識し、肝細胞を破壊してしまうことで肝臓の炎症が起こります。慢性肝炎につながり、その後肝硬変などにつながる場合もあります。
 
水ぼうそう、腺熱、レプトスピラ症、デング熱などの他の症状に関連して急性肝炎になることがありますが、慢性化することはありません。
 
これら肝炎ウイルスによらない肝炎は、まとめて非ウイルス性肝炎と呼ばれます。
 
非ウイルス性肝炎は慢性化したり、肝がんや肝不全につながることがあります。非ウイルス性肝炎が慢性化した場合には治療の必要があります。
 
この他にも、非常に稀なケースではありますが、代謝や遺伝が原因で生じる慢性肝炎があり、ヘモクロマトーシス(肝臓や他の臓器内に鉄分が過度に蓄積して起こります)やウィルソン病(肝臓や他の臓器内に銅が過度に蓄積して起こります)などが挙げられます。

 

肝炎の症状

肝炎の症状は、急性肝炎か慢性肝炎かによって異なります。急性肝炎の症状はすぐにあらわれますが、慢性肝炎の症状は肝臓への損傷が大きくなるまであらわれないことが多いです。
 
一般的な症状としては以下のものが挙げられます:
  • インフルエンザのような症状
  • 腹痛
  • 皮膚や目の黄変(黄疸)
  • 食欲不振
  • 大便の色が薄くなる
  • 尿の褐色化
  • 疲労感
  • 原因のない体重減少

 

肝炎の診断

肝炎の診断にはいくつかの方法があります:
身体検査:肝臓が肥大しているかどうかを確認します。何か問題がある場合には、腹部を圧迫した際に痛みや感じやすさをおぼえるでしょう。また、皮膚や癌部が黄色みを帯びているかどうかも肝炎のサインとしてチェックされます。
 
肝機能検査:血液を採取して、肝臓がどの程度機能しているかを調べます。この検査では、肝臓がどの程度血液中の老廃物を除去するか調べたり、黄疸や酵素、タンパク質のレベルをチェックします。肝臓に損傷があると酵素レベルが高くなります。
 
肝生検:患者の肝臓から少量の検体を採取して検査します。手術の必要はなく、超音波検査装置を用いて位置を確認しながら、専用の針を皮膚に刺して検体が採取されます。肝生検によって、肝臓が炎症を起こしているか、肝臓に損傷がないか、また肝硬変を起こしていないか調べることができますが、通常必要となる検査ではありません。
 
血液検査:肝炎ウイルスの抗原や抗体の有無を調べるために行われ、肝炎のタイプを確認することができます。
 
ウイルス遺伝子検査:特定の肝炎ウイルスの有無を確認するために行われます。
 
腹部超音波:肝臓の肥大や損傷を確認するために行われ、肝臓の粗密の程度や質量も調べられます。
 
CT検査、MRI検査:CT検査やMRI検査は肝臓の質量や肝臓への損傷、肝硬変の有無などについて調べるために行われます。

 

肝炎の治療

肝炎の種類、また急性肝炎か慢性肝炎かによって治療方法は異なります。
 
A型肝炎:通常A型肝炎にかかっても特別な治療は必要ではありません。嘔吐や下痢などの症状がある場合には点滴や食事療法で栄養不良と脱水を予防します。通常、長期的な影響が出ることはなく回復します。
 
B型肝炎:急性のB型肝炎の場合には特別な治療は必要としませんが、医療面での注意を払うことは必要です。慢性のB型肝炎の場合には抗ウイルス剤が必要となります。慢性B型肝炎の場合、抗ウイルス剤の使用は長期にわたることが多く、定期的に受診してウイルスがきちんと管理できているか確認する必要があります。肝硬変や肝がんにつながることもあり、そうなった場合には経過観察が必要になります。
 
C型肝炎:急性肝炎の場合にも慢性肝炎の場合にも、C型肝炎の治療には抗ウイルス剤が用いられます。慢性C型肝炎の場合には、複数の抗ウイルス剤が用いられることもあります。肝硬変や肝がんが進行したような重症のケースでは、肝移植が必要となることもあります。
 
D型肝炎:慢性のD型肝炎は48週間にわたるペグインターフェロンによる治療が行われることがありますが、効果は薄くまた副作用があります。場合によっては肝移植が必要となる場合があります。
 
E型肝炎:E型肝炎の治療法は特になく、入院が必要となることもほとんどありません。一般的に、A型肝炎と同じように自然に治癒します。
 
非ウイルス性肝炎:アルコールの摂取や売薬やサプリメントの服用を中止します。指示された通りに服薬し、過剰に服薬しないようにします。担当医により肝臓の炎症を抑えるための薬が処方されたり、特に重度のアルコール性肝炎の場合には入院となる場合もあります。精製糖や炭水化物、脂肪分の高いものの摂取を減らし、週に3~4日ほど運動をし体重を減らすようにします。特にNAFLDやNASHの場合には、治療薬の開発がまだ進んでいないので、このような対処法が重要となります。

 

予防接種

現時点ではA型肝炎とB型肝炎のみ予防接種を受けることができます。一般的に新生児が受ける予防接種ですが、大人も受けることができます。世界の様々な地域で、医療従事者はA型肝炎とB 型肝炎の予防接種を受けています。

 

おわりに

ウイルス性あるいは非ウイルス性の肝炎に悩む人は世界中に数百万人います。
 
肝炎にかかっているかもしれないと思う場合、あるいは肝炎ウイルスに接触したことが疑われる場合には直ちに受診し、常服薬を飲む前に担当医に相談するようにしましょう。
 
ご心配なことや質問がある場合にはバムルンラードインターナショナル病院の肝臓センターまでご連絡下さい。肝炎にかかっている患者様には、適切な診断から治療までを提供しています。
 
(Dr. Virasak Wongpaitoon, バムルンラードインターナショナル 肝臓センター 胃腸科医、肝臓専門医者)
お問い合わせ先

Related Packages

バムルンラード健康ブログ 第17回 肝炎
Rating score 10 of 10, based on 2 vote(s)

Related Health Blogs